外国出願費用を削減する(その2)。
(1)敢えて国際特許出願(PCT)制度のデメリットを挙げるとすると、受理官庁(日本の特許庁)に国際特許出願時に求められる願書(ローマ字)、明細書(日本語)、図面等を揃え、諸費用(十数万円以上)を納付する必要があることです。また国内出願と同様に、インターネット出願できますが、初心者には扱いにくいユーザーインターフェースと感じています。慣れるまでは、INPIT(Post5参照)の専門家に助けてもらって、その場で出願を完了するのが近道と思います。
(2)国際特許出願(PCT)制度を利用せず、直接対象国に出願することもできます。これをPCTルートに対し、パリルートと呼ぶことにします。但し、パリルートの場合、原則として優先日から12か月以内に出願書類(翻訳文)を対象国の特許庁に提出しなければなりません。しかし、この期間は、既に述べたように国内優先権主張出願や早期審査の申請など国内処理で忙しいでしょう。そのため経験の浅いスタートアップにとってはハードルが高いかもしれません。しかし、PCTルートにかかる費用は発生しません。例えば、PCT出願をした後に、実際には一か国にしか出願書類を提出しなかった場合などは、パリルートの方が安上がりとも言えます。PCTルートを介しても、各国に国内移行するときにパリルートと同様の費用が必要になるからです。
(3)パリルートはスタートアップにとって容易ではありませんが、国内優先権主張出願の場合と同様、必ずしも優先権の基礎とした国内出願をそのまま翻訳し提出する必要はありません。例えば、米国出願の場合、誤記等の訂正のみならず新たな実施例の追加、現地代理人のアドバイスを受け加筆、図面等の補充などもできます。さらに、PCTルートの場合に比べ、米国特許庁への出願が約1年半早くなるので、それだけ審査開始、権利化までの期間が短縮される効果も期待できます。スタートアップにとって極めて重要な発明であり、かつ優先権主張期間(12か月)内に、英語翻訳の準備ができそうであれば、パリルートにチャレンジしてはどうでしょうか。